駿府静岡と私47 静岡の進路と課題3
驛前 松乃鮨「静岡にぎり」
駿府静岡と私47
静岡の進路と課題3
德川宗家第18代当主 德川恒孝さん
前の二つの号で
オランダとドイツの話をしましたが、
この二つの国は
とても地方自治の力が
強い国です。
ドイツには
16の連邦州があり、
各州が
教育、財政、法律など
大きな自治権を
持っていますし、
オランダも
小国ですが
の二大都市は
僅か数十キロの距離にありながら、
日本の都市よりは
遥かに大きい自治権と
夫々の強い個性を
持っています。
日本でも
江戸時代の各藩は
経済的には
完全に独立していましたから、
各藩の財政改善の為に
士農工商の連合体が
江戸や大阪等の大消費地に輸出する
名産品作りに
励みました。
その点
静岡は
家康公ゆかりの地として
駿府代官の治める
天領でしたから、
今日に続く
のびのびとした温かい気風が
育ったのだと思います。
何でもないように見えますが、
このおおらかな温かさは
静岡の宝物と思います。
前号で
静岡の位置が
とても大切なところである
と書きましたが、
第二東名ができたことで
更に
荷主さん達の
清水港の利用度が上がれば、
今度は
船の寄港が増えます。
船は
貨物の集まる港へ集まりますし、
貨物は
輸送コストが安くて
便の多い港へ
集まります。
この良いサイクルに
乗れるか、
乗れないか
の差は
とても大きいものですから、
是非
静岡市全体が
清水港を中心に、
さらに
空・陸も加えた
物流拠点となることに
力を合わせて、
新しい産業の誘致や、
素晴らしい文化を作り出して
旅人の集まる街になって欲しい
と思います。
私は
過去50年、
海外勤務時代を除けば、
毎年静岡(清水)に来ていました。
将軍様役で来る
静岡と、
日本郵船の若手社員として来た
清水では
随分違いますが、
清水港で
蜜柑の船積の立会いとして
徹夜で積荷を見ていたのも
楽しい思い出です。
その時食べた
お寿司が
実に美味かったのも
大切な想い出です。
もう何年か前ですが、
グランシップで
世界寿司祭りが開催された時、
各国の大使夫妻を
御招きしたことが有りました。
皆様
大変に喜ばれて、
もう帰国された大使夫人から
今も家内宛に
御寿司が美味しかった
思い出の手紙が
来たりしているようですが、
旅の想い出というのは、
素晴らしい景色や
買い物もありますが、
何よりも
迎えてくれた人々の温かい笑顔と真心、
そして美味しい食べ物の記憶も
とても重要です。
静岡を訪れる方々が
静岡のゆったりとした明るさと、
美味しい食べ物、
人々の温かい心の想い出を
胸にして帰られることは、
これからの静岡にとって
大切なことと思っています。
※この記事は、静岡商工会議所報2012年8月号に掲載しました。